心を静かに、そして目を瞑る。次の瞬間、私の意識はあの日の岬の天辺へと移動する。恐いくらいの風の音がして、耳の横を逞しい風が通り過ぎていく。目を閉じていても、ぼんやりと瞼を通して、やさしい光が届く。それは分厚い雲の隙間から、海へと差し込む光。
心の中の目を開ければ、鮮やかな緑の丘に咲く白いユリが、強い風に揺れている姿が見える。遠くの砂浜。対岸の遠くの国に思いを馳せて眺める海。あの場所へ行けば、私は大洋の波の一つに戻れるのだ。
初めて沖縄を訪れたのは、今年の4月であった。一週間ほどのスケジュールを組み、前半は石垣島、後半は沖縄本島を旅した。
旅行に出かける前、私は沖縄に関する数冊の本を読みふけり、沖縄に対する期待がピークに達していた。どんな素晴らしい空だろうか、海だろうか、木々だろうか、人々だろうか。
その当時私は、突然仕事が出来なくなってしまったという不安でいっぱいになっており、沖縄に縋るような気持ちで旅に出た。もちろん、スケジュールを決めた当初は、仕事に行けなくなることなど予想だにしていなかったので、このタイミングは全くの偶然である。
行きの空港で私は、「沖縄に行けばきっと何かが良くなる」などと考えていた。完全に他力本願状態である。当たり前だが、そんな状態では、目の前にあるものの素晴らしさを知ることは出来ない。十のうち、一か二は知る事も可能かもしれないが、八や九なんて見えてこない。しかも、私の頭の中には期待でぱんぱんに膨れ上がった沖縄のイメージがあったものだから、恥ずかしながら私は石垣島に到着した当初、肩透かしをくらったように感じていたのだ。心が無ければ感じる場所は無い。
それが徐々に変わってきたのは、翌日訪れた
- 2007/07/03(火) 21:58:26|
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